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苦境に立つハイチ、復興への挑戦

  • 投稿者:
  • NISORO事務局
  • 2011年01月14日

轟音と砂煙を立てながら中米ハイチの田舎町を走る1台のトラック。

その助手席に座っていたアメリカの農学者ドレウ・カッチェンロイター(Drew Kutschenreuter)氏は、

木炭の原料となる樹木、点在する雑穀の畑、緩やかな丘に沿って造られた灌漑用水など、

車窓から見える景色を細かく説明してくれた。

苦境に立つハイチ、復興への挑戦
カッチェンロイター氏は20年以上にわたってハイチで支援活動を行っている。
最近では国際移住機関が進める土壌保全や山腹階段工プロジェクトを手掛けた。
山腹階段工とは、斜面の崩落を防ぐため山腹を階段状に整地して植林を行う工事である。
ハイチでは2010年に発生した大地震や相次ぐハリケーンの直撃で、失業者の増加や環境破壊、
極度の貧困化が連鎖的に進行中だ。カッチェンロイター氏は今、現地の状況を何とか改善するための方策を模索している。


 ハイチでは近年、森林が激減した影響で鉄砲水や土砂崩れが頻繁に発生するようになった。
樹木の根が張っていない土壌には水が浸透しにくい。暴風雨が水系を破壊し、衛生的な飲料水が止まってしまう場合も多い。国連の推計によると、風や雨の影響で年間約3600万トンもの肥沃な表土が流出しているという。その大半は最終的に河川や湖沼に流れ込むため、雨期になると一面泥に覆われ、生息する生物はほとんど姿を消す。肥沃な土壌が失われれば当然、作物の収穫量は減少する。生活に窮した農家の人々は、収入を得るために薪や木炭の原料となる樹木を伐採するようになる。

 多数の被災者が暮らす避難キャンプや、川の水や地下水を飲料水として使用している山間部ではコレラが流行しており、その影響で森林資源がさらに減少する可能性がある。アメリカの非営利団体「パートナーズ・イン・ヘルス」のウェスラー・ランバート(Wesler Lambert)氏によると、コレラを始めとする水媒介性の感染症を予防するため、飲料用に沸騰させた水を使うよう指導されているという。そのため木炭の消費量が急増し、森林の伐採に拍車がかかっている。

 カッチェンロイター氏の活動現場は、ハイチ北部に位置するゴネブ(Gonaives)という地域にある。2010年の大地震による被害を受けずに済んだ一帯で、水流をなだめ表土流出を防ぐ植樹プロジェクトや山腹階段工プロジェクトの指揮にあたっている。国全体で見ればほんの一部にすぎないが、環境を回復した景観の良い手本になるだろう。

 このほか、コロンビア大学地球研究所と国連環境計画(UNEP)が共同で進めるハイチ復興計画(Haiti Regeneration Initiative)という新しいプログラムも、ハイチの環境改善を精力的に進めている。

 このプログラムは、国連が長年にわたるアフリカでの活動で培った方法論に基づいて作成された。責任者を務めるコロンビア大学地球研究所のマーク・レビー教授は次のように語る。「ハイチの作物収穫量は世界でも最低レベルだ。しかし肥料を使い適切な管理を行えば、2倍や3倍の成果はすぐにでも達成できるだろう」。

 ただし、収穫増よりも洪水防止や水質保全を優先するため、一部の丘陵地では作物の栽培を断念した。レビー氏によると、数百年にわたってその土地を生活の拠り所にしてきた貧しい農家の人々に犠牲を強いることになるという。悪化を続けるこの国の環境を改善するためには大きな変革が必要なのだと同氏は主張する。

 2008年に国連の委託を受けて専門家が行った経済報告によると、当時ハイチでは農家に対し輸出品として高く売れるマンゴーの栽培を推奨する動きがあった。だが輸出による利益をほとんど得た経験がない貧しい農家は、自家消費の作物を栽培する従来の生活を変えなかった。彼らの意識を変えるためには政府の強いリーダーシップが必要となるが、大規模な改善は達成できていない。買収などの不正行為が横行した2010年11月の選挙後は混乱状態に陥り、リーダーシップ不在が続いている。

 政府の問題解決能力が乏しいハイチでは、さまざまな環境改善プログラムが行われてはいるが、成果を挙げているのは一部にすぎない。ハイチ復興計画によると数々の復興プロジェクトは、1990年以降で総額3億9100万ドル(約324億円)の資金が投じられたにも関わらず、大半が失敗に終わっているという。原因として、国際的な支援組織と政府の担当部署との連携の欠如、地元住民に対する転職あっせんや地域参加への要請の失敗、「長期的な問題でも短期的な対策しか講じない」この国の慣例などが考えられる。

 ハイチ復興計画がその基本理念として強調するのは、NGO、政府、およびプロジェクト当事者の地域住民が一致協力する重要性である。地球研究所のアレックス・フィッシャー氏によると、来年2012年実施予定の活動の大半は、各自治体の首長らで構成する委員会と協力して進められる。

 フィッシャー氏はこう語る。

「さまざまなグループが連携するという流れが生まれ始めている。
重要な役割を担う人々全員に非常に強固な意識統一が芽生えているばかりか、
挙国一致の運動に発展する可能性も秘めている。
この路線さえ踏み外さなければ、間違いなく国の未来は明るい」。

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