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“スロー地震”が大地震を抑制か

  • 投稿者:
  • NISORO事務局
  • 2010年12月13日

ここ数年、専門家の間では「スロー地震」と呼ぶ現象が注目されている。数日から数週間、長くは数か月かけてゆっくり起こる地震である。このスロー地震が通常の地震の発生を増やしているのか抑制しているのかという問題について、一つの解答を示す研究成果が発表された。

“スロー地震”が大地震を抑制か

スロー地震は、発生する深さによって深部と浅部の2種類が知られている。深部スロー地震は、地下およそ30~40キロ付近で発生し、数分間から場合によっては数日間持続する。発生する震動は微弱であり、解放された地震波エネルギーに基づいて地震の規模を表すモーメント・マグニチュードの値は1~2程度にすぎない。これに対し浅部スロー地震は、震源の深さが5キロと浅く、モーメント・マグニチュードは3.5~4程度になる。

 岩盤のひずみに蓄積したエネルギーが解放されて発生する機序は、他の地震と変わりはない。ひずみが解消された岩盤は安定した状態に移行し、しばらく地震は発生しない。

 アメリカ、オレゴン州立大学の地球物理学者クリス・ゴールドフィンガー氏は、「研究者の間ではスロー地震が発生する深部と浅部の中間で何が起こっているのか長い間謎とされてきた」と話す。

 スロー地震が発生すると、その一帯に蓄積したエネルギーはすべて解放されるのだろうか。それとも深部および浅部のスロー地震によってエネルギーが中間部に移行し、将来発生する大地震の源になるのだろうか。

 今回スロー地震の謎に挑んだのは、日本の防災科学技術研究所の廣瀬仁氏が率いる研究チーム。大分県と愛媛県を隔てる豊後水道の周辺で起きたスロー地震のデータを分析した。

 この地域では1997年以降およそ6年ごとにスロー地震の発生が記録されているが、観測データから深部と浅部の地震が前後して発生していることがわかった。これは、両震源での地殻変動がリンクしており、一方の地震が他方を誘発した可能性を示している。

 だとすれば、両震源の中間部にも地殻変動があったと考えられる。だがデータに中間部で地震が発生した痕跡はない。そこで研究チームは、地震波ではなく地殻変動そのものを感知する高精度GPS機器を使用して中間部のスロー地震を確認しようと試みた。

 すると期待したとおり、GPSデータは中間部でスロー地震が発生していることを示した。その地殻変動は極めて緩やかだった。廣瀬氏はこの地殻変動について、「非常に緩慢なため地震波は発生しない。そこでは数日から数年かけて断層のずれが生じる」と説明する。

 ただし廣瀬氏によれば、この地震はゆっくり起こるが決して弱いわけではない。実際その規模は、2010年1月にハイチで発生した大地震とほぼ同じマグニチュード7程度だという。両者の違いは、全エネルギーの解放が数秒から数分で終わるか、数か月かかるかという点にある。

 オレゴン州立大学のゴールドフィンガー氏は今回の研究成果について、スロー地震というエネルギーの解放により、甚大な被害をもたらす大地震が抑止されていると明らかにした点を評価する。「少なくとも豊後水道周辺の断層帯では、ひずみに蓄積した大量のエネルギーが大きな揺れを引き起こすことなく解放されている。また、スロー地震の発生する地域は大地震の連鎖を食い止める役割を果たしている可能性もある」。

 廣瀬氏は、スロー地震は世界各地で観測されており、大地震の抑止に一役買っているかもしれないとしつつ、次のように話した。「ただし、深部、中間部、浅部すべてに渡って発生している地域は一部にすぎない。すべての深度でエネルギーが解放されない限り、大地震を抑止する効果はあまりないと考えられる」。

 だが、スロー地震は観測がそれほど容易ではない。裏を返せば、世界には知られていない発生地域が至るところに潜んでいる可能性も考えられるという。

 今回の研究成果は、12月10日発行の「Science」誌に掲載されている。

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