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山に優しい登山道、広がる 水の流れに配慮し、造り直し

  • 投稿者:
  • NISORO事務局
  • 2010年11月17日

山に優しい登山道、広がる 水の流れに配慮し、造り直し 山に優しい登山道、広がる 水の流れに配慮し、造り直し2

雨や雪解けの水が、山の形状に沿って流れていく――。そんな自然の姿を損なわないよう、工夫しながら登山道を造り直す取り組みが各地に広がっている。歩きやすさを優先するあまり、水の流れを邪魔して土の浸食を起こしたり、木々の後退を招いたりした従来の登山道に代わる「近自然工法」だ。取り組んだ国立公園は、すでに六つを数える。

 最大の国立公園・北海道の「大雪山」。山岳地帯の北部に位置する愛山渓で今年9月、朽ちた登山道が計約600メートルにわたって再整備された。

 雨や融雪の水はどう山肌を伝うか事前によく観察。もとからある巨石を基点に、登山道として石や木で階段状の段差を造ったり、半円状に石を組んだりして自然な流れに沿わせながら水の勢いを弱めていく。自然にとけ込むよう、見た目も配慮した。

 整備を担当した環境省北海道地方環境事務所の内木昭太・自然保護官(30)は「人の歩きやすさだけを考えることなく、水の処理の仕方にも重きを置きました」と説明する。

 傾斜があり、水が勢いよく流れやすい登山道ではこれまで、歩きやすいよう直線的に石や木を置くことが多かった。すると、水の流れを邪魔して、土壌の浸食を引き起こすところが出てきた。そこを登山者が歩けば地面はすり減る。雨が降ると水路になり、さらに浸食が進む。歩きづらくなったのを嫌って登山者が脇を歩けばもう1本、新たに道ができて植生が後退し、山が荒廃する――そんな悪循環が続いていた。

 「近自然工法」はもともと、治水優先で直線化した川を再び蛇行させ、本来の生態系を戻すための環境に配慮した河川工法として始まった。欧州で普及しているのを知った建設コンサルタント会社・西日本科学技術研究所(高知市)の福留脩文(ふくどめ・しゅうぶん)所長(67)が1986年に日本に紹介。その後、河川行政の指針につながった。

 福留さんはこの工法を山でも試みていた。98年、屋久島で廃道となっていた参道を復活させるにあたり、地元の理解を得て、約2キロの区間で現地の石を使い、間に砂利をかませて石段をつくった。これが、近自然工法で登山道をつくった最初の例だ。

 屋久島は日本有数の多雨地帯だが、今年9月、整備から12年たって福留さんが現地を確認したところ、浸食の進行はほとんど見られなかった。当初はなかったコケが石を覆い、周りの景観にもなじんでいたという。

 福留さんの取り組みは環境省の地方事務所で注目され、試行実験の後、傷んだ登山道を再建する際に着工例が広がった。今年度になって北海道で整備が進み、愛山渓と同じ大雪山系のトムラウシ山(約250メートル)や利尻山(計約440メートル)、世界遺産・知床の羅臼岳(計約200メートル)で導入された。

 現地でアドバイスを続ける福留さんは「自然の状況は場所によって違う。地域の自然を理解する人たちが、試行錯誤しながら継続的に環境を守っていけるシステムをつくることが大切です」と話す。


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