アメリカのバラク・オバマ政権は、ホワイトハウスへの太陽光発電システム設置を来春予定している。しかし気候変動リスクの最前線に立たされているインド洋の小国では、既に再生可能エネルギーの導入が進んでおり、一歩遅れを取ったかたちだ。

9月30日、インド洋に浮かぶ島国モルディブの大統領官邸ムーレ・アージェの屋根に、48基の太陽光発電モジュールが取り付けられた。地球の裏側のアメリカ、カリフォルニア州から、衛星技術を活用して設計されたシステムだ。
同国のモハメド・ナシード大統領は昨年、海中で閣議を開催して地球温暖化の脅威をアピールしており、今回の設置もそれに続く行動といえる。
モルディブは、サンゴ礁に浮かぶ1190の島々からなる全長860キロ超の群集国家。熱帯気候で平均海抜がわずか1.5メートルしかないため、海面上昇や台風の影響を受けやすい。
ナシード大統領によると、既に16の島で侵食が深刻な問題にまで発展し、貴重な淡水源が塩水で汚染されている島は60に及ぶという。また、観光業に次ぐ主要産業である漁業の低調も世界規模の気候変動に起因していると危惧している。
「モルディブにとって、気候変動は先送りできる問題ではない」と、10月5日に首都マレから行った電話会議でナシード大統領は発言している。「今解決しなければならない問題だ」。
官邸の屋根に設置されたシステムは、今後25年の稼働期間中、1年あたり1万5000キロワット時の発電が見込まれ、200トンもの二酸化炭素削減につながる。ナシード政権は2020年までに、二酸化炭素の排出/吸収量が釣り合う「カーボンニュートラル」を達成するという公約を掲げている。
システム設計を担当したのは、カリフォルニア州オークランドで太陽光発電システム事業を展開するサンジェビティ(Sungevity)社。官邸の電力費30万ドルの削減が目標だ。パネルは韓国のモジュールメーカー、LGエレクトロニクス社から無償提供された。
「ナシード大統領は太陽光発電システムがいかに賢く経済的な投資であるかを証明し、それに呼応するようにオバマ大統領もシステム導入をアメリカ国民に発表した。ともにこのシステムの高い効果を理解した結果だ」と、サンジェビティ社の共同創設者で代表を務めるダニー・ケネディ氏は話す。
オーストラリア出身のケネディ氏は、同社設立前に環境保護団体グリーンピースで長年活動し、カリフォルニア州ソーラー・イニシアティブ(California Solar Initiative)の支援に携わっていた。気候変動対策を推進する団体350.orgと協力して、オバマ大統領をはじめとする主要国のリーダーに太陽光発電システムを官邸に導入するよう訴えているメンバーの1人でもある。
モルディブで採用された太陽光発電システムは、サンジェビティ社が開発した遠隔エンジニアリングシステムを使用して設計されている。同社はまず、衛星画像や航空写真画像を用いて、建物の3次元モデルを作成する。モデルは、屋根の傾斜と方位、太陽光の角度など詳細なデータを網羅しており、カリフォルニアのオフィスからでも正確な設計が可能だ。
創業2年の同社はカリフォルニアやコロラド、アリゾナの顧客を対象に、一般住宅用の太陽光発電システム設計や価格見積りをメールで提供するサービスを展開中で、来年には全米規模でのビジネスを目指している。「インターネットショッピングのような手軽さを実現したい」とケネディ氏は話す。システムに必要な設備はリースできるため初期コストが少なくて済み、およそ60パーセントの顧客は電気代節約を容易に達成しているという。また同社は、導入後10年のリース期間を通算すれば、すべての顧客が電気代を節約できると約束している。
「我々の考えが正しいことを証明していきたい。社会全体が今後向かっていくべき方向だと確信している」とケネディ氏は語った。
「我々には行動あるのみだ」とナシード大統領は述べている。「大統領という立場上、難しい面もあるが、可能性に賭けてみるしかない。国民にもどんどん訴えていかなければ」。
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