化石燃料を消費する自動車や飛行機、発電所、住宅の製造や建設をすべてストップしたら、地球温暖化の進行はどうなるのだろうか。

(毎年、全世界で5000万台もの自動車が新たに出荷されている。今後、すべての移動体製造やインフラ整備を停止した場合、二酸化炭素排出量がどう変化するかを探る研究が行われた。導き出されたのは、「いまからでも地球温暖化は食い止められる」という結論だった。)
環境保護論者の夢想か、あるいは企業家がうなされる悪夢か。だが、2010年9月10日発行の「Science」誌に掲載された新たな研究では、この問題が真剣に論じられている。
推計によると、既存の機器や設備を使い続けても、新たな製造を止めれば今後の気温上昇は0.3~0.7度に留まるという。産業革命以前からの気温上昇を考慮すれば、トータルで2度未満に抑えられることになる。
環境、科学、宗教をベースとするグループが幅広く連携するIPCC(気候変動に関する政府間パネル)も、気候変動による悪影響を回避する上で、気温上昇が重要な指標になるとしている。2009年には、「地球温暖化問題への取り組みが効果を上げているかの判断基準は“2度”」という結論で合意した。コペンハーゲンで2009年12月に開催された気候変動サミットでも、多くの先進国が気温上昇の限界値としてこの数字に同意を示している。
ドイツのケルンにある環境コンサルティング会社エコフィス(Ecofys)の気候変動政策の専門家ニクラス・ヘーネ氏は今回の研究を受け、「いまから対策を講じても“2度”という目標を達成できることを示している」と話す。
同氏は、「この予測結果は朗報だ」と評価する。
しかし、世界では毎年5000万台もの新車が製造されており、台頭著しい中国では石炭火力の発電所が次々に建設されている。住宅バブルの崩壊で不動産開発は落ち着いたものの、止まってはいない。今回の研究は、この危機的状況に警鐘を鳴らしている。
アメリカ、カリフォルニア州にあるスタンフォード大学カーネギー研究所で気候について研究し、チームのリーダーを務めたスティーブン・デービス氏は、「これから整備が進むインフラ次第では最悪の事態も起こりかねない。今後の進路選択は慎重な判断が求められる」と警告している。
研究に用いられた試算は、既存の移動体、建築物、発電所からのCO2排出量が2050年を境にゼロになるとの前提で行われた。
さらに、今後産み出されるすべての産業製品が一切のCO2を排出しないという夢のような話が実現すれば、大気中のCO2レベル上昇は現在の約390ppmから410ppm前後に抑えられるのだという。「“410ppmでも高すぎる、350ppmを目標にすべきだ”という声もあるのだが、410でさえ非常に困難なのが現実だ」とデービス氏は述べている。
エコフィス社のヘーネ氏は、「長寿命設計の機械や設備が増える傾向にある」と指摘する。
「これまでと同じようにエネルギーを大量消費するインフラが増えて行けば、一部の設備を早期に停止しない限り、目標の“2度”達成は非常に困難になるだろう。つまり、今後10年間がすべての鍵を握る」。
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