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深刻、口蹄疫 七つの疑問に迫る

  • 投稿者:
  • NISORO事務局
  • 2010年05月28日

◇強い感染力、豚に拡大深刻化/発症抑制にワクチン、水際対策など課題

 宮崎県で猛威を振るう家畜伝染病、口蹄疫。牛や豚、約15万2000頭が殺処分の対象となっている。感染はなぜ拡大したのか、ワクチン接種した家畜をなぜ殺さなければならないのかなど、気になる七つの疑問に迫った。

口蹄疫を引き起こす口蹄疫ウイルス(電子顕微鏡で撮影)。ウイルスの直径は21~25ナノメートル
[口蹄疫を引き起こす口蹄疫ウイルス(電子顕微鏡で撮影)。ウイルスの直径は21~25ナノメートル]

Q 口蹄疫とはどんな病気か? 感染する動物は決まっているのか?
 A 主に牛や豚など蹄(ひづめ)が偶数(2本または4本)ある偶蹄目の家畜や野生動物がかかり、感染すると口の中や蹄の付け根に水ぶくれができる。死亡率は数%だが、餌がとれなくなって肉質が落ち、成長も遅れるため経営を圧迫する。早期封じ込めのため同じ農場の家畜も含め殺処分される。

 奇数の蹄を持つ奇蹄目はウマやサイなど十数種類だが、偶蹄目はヤギ、ヒツジ、イノシシなど約180種類もあり世界中で繁栄している。上野動物園動物相談員の橋崎文隆さんによると、有袋類のカンガルーも口蹄疫に感染し、アフリカ水牛には感染したまま発症しないキャリアーもいる。「主に偶蹄目が感染する理由を説明した論文は見当たらない。抵抗性を獲得した種類とそうでない種類の違いとしか言えません」

 Q 「感染力が強い」というがどれほど?
 A 「家畜のウイルスでこれほど強いものは他にありません」。前動物衛生研究所所長の村上洋介・帝京科学大教授(動物ウイルス学)は断言する。感染は、家畜の体内で増殖したウイルスが排出され、別の家畜に入ることで広がる。口蹄疫ウイルスはふんや体液、乳などすべての排出物に含まれるうえ、体外に出ても感染力が落ちない。洋服や靴に付着したウイルスが夏場で9週間生存したとする報告もあるという。

 ふんを踏んだ靴、道路上の飛散物に接したタイヤ、それに犬猫鳥……ウイルスはあらゆるものを「乗り物」にして移動する。

  

 Q 2000年には宮崎県と北海道で口蹄疫が発生したが、当時の状況は?

 A 日本では92年ぶりの発生で、当時は740頭の牛が処分され、豚への感染はなかった。今回と比べると感染は比較的小規模だったと言える。

 Q 00年と比べ、なぜ今回はこんなにも感染が拡大したのか?
 A 農水省動物衛生課によると、現在考え得る理由は三つ。(1)同じ口蹄疫ウイルスでも今回の方がより感染力が強い(2)発生現場では農場同士が比較的近距離にあった(3)前回は感染しなかった豚に感染した。

 村上教授は特に「豚への感染が、感染拡大に大きく影響した」とみる。豚の体内でウイルスは激しく増殖し、体外に多量に出るからだ。「吐く息からウイルスが噴き出している状態」といい、排出量は牛などの100~2000倍。しかも豚は潜伏期間が約10日と牛(約6日)より長く、その期間中にもウイルスを排出する。

 Q 種牛の歴史は? 宮崎県の「エース級種牛」はどうやって格付けされるのか?

 A 和牛は、古くは農家で農耕や運搬に使う役肉用牛(えきにくようぎゅう)が中心だったが、戦後、働き盛りを過ぎた牛を食用にする役肉兼用種に切り替えられ、高度経済成長期には肉専用種に替わった。さらに91年の牛肉の輸入自由化が大きな転機となった。全国和牛登録協会(京都市)の吉村豊信専務理事は「肉量はもちろん、肉質も改良しなければ外国産牛肉に太刀打ちできないと、畜産農家や関係者が育種改良を繰り返し、優秀な種牛を作り上げてきた」と話す。

 宮崎県では、子牛の発育状況などを外見でみる「直接検定」がまずある。次に同検定をパスしたオス牛の精液から誕生した子牛を肥育して、子牛の肉質をみる「後代検定」が控える。基本的には二つをパスした牛が種牛になる。さらに、特に優秀な種牛のうち、肥育農家の評価などからエース級種牛が誕生する。エース級にとどまるのは3、4年。宮崎県の担当者は高級ブランド「宮崎牛」の種牛49頭を殺処分することに「県には大きな痛手。1頭の種牛をつくるのに7年かかるのに」と話す。

  

 Q 封じ込めはできるのか?
 A 今回、国や宮崎県は、発症した家畜の農場に飼われていた家畜の殺処分と、施設の消毒でウイルスを抑え込もうとしたが、感染拡大に歯止めがきかなくなった。そこで、踏み切ったのが、感染発生地から半径10キロの移動制限区域の家畜に対するワクチン接種だ。ワクチン接種をしたうえで殺処分する。

 ワクチンは感染した家畜の発症を抑える。結果的に「体外へのウイルス排出量を減らし、感染の拡大スピードを抑えられる」(農水省)。

 ただ、ワクチン接種により、「感染しても発症しない」家畜が存在することになる。このため感染範囲が把握できなくなり、今後「見えない感染拡大」が起きる危険がある。ワクチン接種をした家畜は、非感染も含めてすべて殺処分されるのはこのためだ。

 一方「どうせ殺すなら、最初から殺処分すればいいのでは」という疑問に対しては、農水省は「一度に埋却する余裕がない」と説明する。

 ワクチンは1~2週間で効果が出る。村上教授は「燃えさかる火を鎮める効果はあるだろう」とみる。政府は他の都道府県での調査も続けているが該当例は出ていない。

 Q ウイルスはどこから宮崎に来たのか?
 A 00年の事例では、農水省は感染源を「中国産稲ワラの可能性が最も高い」と示唆している。農水省の担当者は私見としたうえで「前回と同じ稲ワラが原因なら宮崎県だけでなく全国で散発する可能性がある。今回は稲ワラの可能性は薄いと思う」と話す。

 今年は中国、台湾、香港、韓国でも口蹄疫の発生が報告されている。遺伝子検査で、宮崎のウイルスはアジア地域で確認されたウイルスと近縁であることも分かった。村上教授は「ウイルスの活動は東アジア全域で活発化しており、どこの国かを特定するのは難しい」と話す。ルートについても、輸入動物、輸入畜産物への検疫は行われているが、旅行者の衣服や資材などに付着しているような場合はチェックが難しい。村上教授は「日本で口蹄疫が発生したのは、約100年間で今回を含め3回。外国が苦い経験を積んで対策を重ねてきたのと比べると、経験に乏しい。発生場所周辺の消毒や水際での防疫など検討すべきことがあるのでは」と指摘する。

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